ポーランド人作家 Igor Morskiの作品
ボートの上にいる母親と水面に映りこんでいる父親は、コインの裏と表のように一体で同じボートに乗っているようだが、実はそれぞれが反対の方向に行こうとオールを漕いでいる。画面を対角に切るオールから、力の対立と緊張が伝わってくる。
少し離れたところにいる少女がぬいぐるみを抱え、緊張を肌で感じているのか、あどけない表情のなかにも不安の陰りを見せる眼差しで、何かを訴えているかのようにこちらをじっと見ている。
今にも冷たい雨が降り出しそうな怪しい雲行きに対して、家族はずいぶん無防備に見える。
試しに上下を反転してみると、父親の方がより固い表情で、両腕や肩には力が入っているのがよくわかる。そして父親のボートの方には女の子の姿が写り込んでいないことも…
実に悲しい絵だが、 現代の「家族」の姿を映し出す鏡のように思える。
「家族」はどこに向かっているのだろうか。