黙示録は聖書を構成する全六十六巻の中でも特別難解な書のうちに一つであり、その分、その解釈にあたって細部に至るまで読者の関心を引く書である。
ただ数多く使われているシンボリズムのディティールに囚われ過ぎて、大局的な見地を失いがちなのもまた事実である。だから一枚の大きな絵画を鑑賞するときのように、全体像を観て、次に細部をよく観察し、また距離を置いて全体像の中の細部として認識し直す必要がある。
先日、七つの封印をもつ巻物についていくつかの記事をまとめたが、使徒ヨハネが与えられたその巻物の幻は、使徒が天の御座まで引き上げられて与えられた啓示であり、彼が地上のパトモス島において、主の日に、地上の七つの教会へ対して書くように命じられた巻物(βιβλίον biblion 単数形)とは、明らかに区別されて啓示されているのである。
黙示録1:9-20
9 あなたがたの兄弟であり、共にイエスの苦難と御国と忍耐とにあずかっている、わたしヨハネは、神の言とイエスのあかしとのゆえに、パトモスという島にいた。
10 ところが、わたしは、主の日に御霊に感じた。そして、わたしのうしろの方で、ラッパのような大きな声がするのを聞いた。
11 その声はこう言った、「あなたが見ていることを書きものにして、それをエペソ、スミルナ、ペルガモ、テアテラ、サルデス、ヒラデルヒヤ、ラオデキヤにある七つの教会に送りなさい」。
12 そこでわたしは、わたしに呼びかけたその声を見ようとしてふりむいた。ふりむくと、七つの金の燭台が目についた。
13 それらの燭台の間に、足までたれた上着を着、胸に金の帯をしめている人の子のような者がいた。
14 そのかしらと髪の毛とは、雪のように白い羊毛に似て真白であり、目は燃える炎のようであった。
15 その足は、炉で精錬されて光り輝くしんちゅうのようであり、声は大水のとどろきのようであった。
16 その右手に七つの星を持ち、口からは、鋭いもろ刃のつるぎがつき出ており、顔は、強く照り輝く太陽のようであった。
17 わたしは彼を見たとき、その足もとに倒れて死人のようになった。すると、彼は右手をわたしの上において言った、「恐れるな。わたしは初めであり、終りであり、
18 また、生きている者である。わたしは死んだことはあるが、見よ、世々限りなく生きている者である。そして、死と黄泉とのかぎを持っている。
19 そこで、あなたの見たこと、現在のこと、今後起ろうとすることを、書きとめなさい。
20 あなたがわたしの右手に見た七つの星と、七つの金の燭台との奥義は、こうである。すなわち、七つの星は七つの教会の御使であり、七つの燭台は七つの教会である。
使徒ヨハネは、自分の「うしろから」栄光の主の声を聞き、振り向いたら七つの教会のシンボルである七つの金の燭台の間にいる主イエスの栄光を見たのである。
しかし使徒ヨハネが七つの教会へ書き送るメッセージを受け取った後、今度は天が開けて、彼は御座まで引き上げられ、使徒が地上で生きている時代のことではなく、「これから後に起こるべきこと」の幻を見るように導かれた。
使徒に話しかけている声は同じ方、つまり御子イエスであったことを考えると、使徒の背後に自らを顕示されたことと、使徒を天に引き上げ、天の御座の前で顕示されたその違いは、大きな意味をもつように思える。
黙示録4:1-2
1 その後、わたしが見ていると、見よ、開いた門が天にあった。そして、さきにラッパのような声でわたしに呼びかけるのを聞いた初めの声が、「ここに上ってきなさい。そうしたら、これから後に起るべきことを、見せてあげよう」と言った。
2 すると、たちまち、わたしは御霊に感じた。見よ、御座が天に設けられており、その御座にいますかたがあった。
しかも「これから後に起こるべきこと」は、地上の七つの教会へ宛てて使徒ヨハネの「耳元で告げられた」メッセージとは異なり、他の誰も開くことができず、御子だけが開くことができた七つの封印で封じられた一巻の巻物(βιβλίον biblion 単数形)に書き記されてあった内容であった。
黙示録5:1-10
1 わたしはまた、御座にいますかたの右の手に、巻物があるのを見た。その内側にも外側にも字が書いてあって、七つの封印で封じてあった。
2 また、ひとりの強い御使が、大声で、「その巻物を開き、封印をとくのにふさわしい者は、だれか」と呼ばわっているのを見た。
3 しかし、天にも地にも地の下にも、この巻物を開いて、それを見ることのできる者は、ひとりもいなかった。
4 巻物を開いてそれを見るのにふさわしい者が見当らないので、わたしは激しく泣いていた。
5 すると、長老のひとりがわたしに言った、「泣くな。見よ、ユダ族のしし、ダビデの若枝であるかたが、勝利を得たので、その巻物を開き七つの封印を解くことができる」。
6 わたしはまた、御座と四つの生き物との間、長老たちの間に、ほふられたとみえる小羊が立っているのを見た。それに七つの角と七つの目とがあった。これらの目は、全世界につかわされた、神の七つの霊である。
7 小羊は進み出て、御座にいますかたの右の手から、巻物を受けとった。
8 巻物を受けとった時、四つの生き物と二十四人の長老とは、おのおの、立琴と、香の満ちている金の鉢とを手に持って、小羊の前にひれ伏した。この香は聖徒の祈である。
9 彼らは新しい歌を歌って言った、「あなたこそは、その巻物を受けとり、封印を解くにふさわしいかたであります。あなたはほふられ、その血によって、神のために、あらゆる部族、国語、民族、国民の中から人々をあがない、
10 わたしたちの神のために、彼らを御国の民とし、祭司となさいました。彼らは地上を支配するに至るでしょう」。
以下は黙示録の中の二巻の巻物の特徴を簡単にまとめたものである。省察を深めていけば、さらに書き加えることができると思う。
- 二巻とも御子イエスによって啓示された。
- 一巻目は地上のパトモス島にいた使徒ヨハネの背後で啓示され、二巻目は天の御座まで引き上げられた使徒の目の前で啓示された。
- 一巻目は小アジアの七つの教会に宛てて書かれたメッセージであり、二巻目は主の日を迎える全世界に対して書かれたメッセージである。
- 一巻目は七つの教会への悔い改めと励ましのメッセージ、二巻目は七つのラッパと七つの杯を象徴とする、全世界に対する神の正しい報復と審判のメッセージである。
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