「第三神殿」と「神の宮」についての考察
確かに新約聖書は、御子イエス・キリストを信じる者が個人として、さらに集合体として「神の宮」であることを明確に示している。
Ⅰコリント3:16-17
16 あなたがたは神の宮であって、神の御霊が自分のうちに宿っていることを知らないのか。
17 もし人が、神の宮を破壊するなら、神はその人を滅ぼすであろう。なぜなら、神の宮は聖なるものであり、そして、あなたがたはその宮なのだからである。
Ⅰコリント6:19
あなたがたは知らないのか。自分のからだは、神から受けて自分の内に宿っている聖霊の宮であって、あなたがたは、もはや自分自身のものではないのである。
Ⅱコリント6:16
神の宮と偶像となんの一致があるか。わたしたちは、生ける神の宮である。神がこう仰せになっている、「わたしは彼らの間に住み、かつ出入りをするであろう。そして、わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となるであろう」。
エペソ2:21-22
21 このキリストにあって、建物全体が組み合わされ、主にある聖なる宮に成長し、
22 そしてあなたがたも、主にあって共に建てられて、霊なる神のすまいとなるのである。
へブル3:6
キリストは御子として、神の家を治めるのに忠実であられたのである。もしわたしたちが、望みの確信と誇とを最後までしっかりと持ち続けるなら、わたしたちは神の家なのである。
しかし「私たちは神の宮である」と書き記した使徒パウロが、テサロニケ教会に対して書き送った書簡には、反キリスト(「不法の者」「滅びの子」)の出現に関連して、以下のように啓示している。
Ⅱテサロニケ2:3-8
3 だれがどんな事をしても、それにだまされてはならない。まず背教のことが起り、不法の者、すなわち、滅びの子が現れるにちがいない。
4 彼は、すべて神と呼ばれたり拝まれたりするものに反抗して立ち上がり、自ら神の宮に座して、自分は神だと宣言する。
5 わたしがまだあなたがたの所にいた時、これらの事をくり返して言ったのを思い出さないのか。
6 そして、あなたがたが知っているとおり、彼が自分に定められた時になってから現れるように、いま彼を阻止しているものがある。
7 不法の秘密の力が、すでに働いているのである。ただそれは、いま阻止している者が取り除かれる時までのことである。
8 その時になると、不法の者が現れる。この者を、主イエスは口の息をもって殺し、来臨の輝きによって滅ぼすであろう。
使徒パウロは書簡を書いていた時に「すでに働いてい」た「不法の秘密の力」について、単にその霊的影響力がある時点で増大する、と預言しているのではなく、反キリストが一人の人間となって出現することを啓示している。だから4節の「自ら神の宮に座して」だけを霊的解釈し、「贖われた信仰者のうちに反キリストが座する」とするのは無理があるのではないだろうか。3節の「背教」と関連させることもできなくはないが、反キリストの支配は、「一度は贖われ、神の宮となっていたが、反キリストの惑わしによって信仰を捨てた者」だけでなく、「獣を拝むことを拒否する者以外の全ての人々」に及ぶことになるからである。
黙示録13:4-8;15
4 また、龍がその権威を獣に与えたので、人々は龍を拝み、さらに、その獣を拝んで言った、「だれが、この獣に匹敵し得ようか。だれが、これと戦うことができようか」。
5 この獣には、また、大言を吐き汚しごとを語る口が与えられ、四十二か月のあいだ活動する権威が与えられた。
6 そこで、彼は口を開いて神を汚し、神の御名と、その幕屋、すなわち、天に住む者たちとを汚した。
7 そして彼は、聖徒に戦いをいどんでこれに勝つことを許され、さらに、すべての部族、民族、国語、国民を支配する権威を与えられた。
8 地に住む者で、ほふられた小羊のいのちの書に、その名を世の初めからしるされていない者はみな、この獣を拝むであろう。
15 それから、その獣の像に息を吹き込んで、その獣の像が物を言うことさえできるようにし、また、その獣の像を拝まない者をみな殺させた。
そして聖書には、御子の贖いを受け入れない人々を「神の宮」と呼んでいる箇所は存在しない。
またもし「神の宮」を霊的にだけ解釈しなければならないのなら、以下の黙示録の啓示をどう説明し得るだろうか。
黙示録11:1-3
1 それから、わたしはつえのような測りざおを与えられて、こう命じられた、「さあ立って、神の聖所と祭壇と、そこで礼拝している人々とを、測りなさい。
2 聖所の外の庭はそのままにしておきなさい。それを測ってはならない。そこは異邦人に与えられた所だから。彼らは、四十二か月の間この聖なる都を踏みにじるであろう。
3 そしてわたしは、わたしのふたりの証人に、荒布を着て、千二百六十日のあいだ預言することを許そう」。
「第三神殿の再建」を「神が望んでいる善なる御旨」と解釈する必然性はない。また第三神殿が再建されることを信じる者を「キリスト教シオニスト」と一括りすることはできない。
主なる神が「国が始まって以来、その時まで、かつてなかったほどの苦難の時」を備え、その時を「イスラエルの民の救いの時」と定めているように、また「不法の者が出現し、神の御名を穢す」ことを許すように、本来御子イエスの尊き死によって不要となっているはずの神殿祭儀を人々が再開することを許すのも、主なる神の計画における、その時期の唯一無二の特殊性を示していることを考慮する必要がある。
ダニエル12:1
その時、あなたの国の人々を守る大いなる君、ミカエルが立ち上がる。国が始まって以来、その時まで、かつてなかったほどの苦難の時が来る。しかし、その時、あなたの民で、あの書にしるされている者はすべて救われる。
黙示録17:17(新改訳)
それは、神が、みことばの成就するときまで、神のみこころを行なう思いを彼らの心に起こさせ、彼らが心を一つにして、その支配権を獣に与えるようにされたからです。
Ⅱテサロニケ2:9-12
9 不法の人の到来は、サタンの働きによるのであって、あらゆる偽りの力、しるし、不思議がそれに伴い、
10 また、滅びる人たちに対するあらゆる悪の欺きが行なわれます。なぜなら、彼らは救われるために真理への愛を受け入れなかったからです。
11 それゆえ神は、彼らが偽りを信じるように、惑わす力を送り込まれます。
12 それは、真理を信じないで、悪を喜んでいたすべての者が、さばかれるためです。