an east window

夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

カダフィ後のリビアの石油利権に関する記事

 少し時間が経ってはいるが、『Il Sole 24ORE』という、イタリア国内では第二位の経済新聞の記事としては明け透けで大胆な内容なので翻訳してみた。

f:id:eastwindow18:20160308200825j:plain

2016年3月6日付

『リビアの大分配:最低でも1300億ドルの戦利品』

ヴィットリオ・エメヌエーレ・パルシの分析とアルベルト・ネグリによる記事

 

この火曜日にヴェネツィアのドゥカーレ宮殿で会合する際、マッテオ・レンツィ(訳者注:現イタリア首相)とフランソワ・オランド(訳者注:現フランス大統領)は目と目を合わせ、一つの問いをしなければならないだろう。いかなる理由で我々はリビアで戦争をするのか、と。答えは明らかである。「イスラム帝国」。これは都合のいい方の答えである。

リビアの戦争は、フランスとイギリス、アメリカの介入で2011年に始まり、カダフィ大佐の終焉と共に、部族や軍隊同士そしてイスラム内の争いとなりはしたが、しかしそれでも地政学的・経済的利権の争いとして残った。その結果は、民主主義の到来などではなく、「リビアは人間の発展のONU指数がアフリカにおいて第一位だったが、現在は破綻した国家である」という、一つのデータで総括される。

この戦争は実際には、外部の当事者らと、リビアの主要な二極であり、石油輸出のための平行し競合している二本のパイプラインをもつ、トリポリとトブルクとの間の、「落とし前をつける」ためのものであり、「ケーキの分配」である。

ここでは、アフリカ大陸の石油の38%(ヨーロッパの消費の11%)という、アフリカの最も重要な資源のいくらかを自由にできる。高品質の原油で低価格。厳しい時期にいる石油会社には喉から手が出るものだ。現在、トリポリ地方からバレルとガスを採掘しているのは、ENI(訳者注:Ente Nazionale Idrocarburiの略で「炭化水素公社」という意味。イタリア最大の半国有会社)だけである。このポジションは、派閥と外国人傭兵の間の策略によって獲得したものであり、我々の同盟国らの目には、可能であるなら、我々の軍事的貢献によって終わらせなければいけないものである。

同盟国にとっては、たといイタリアがリビアにおいて50億の注文額を損失したとしても、我々が「黒い金」のバレルの実質的輸入割当量分の資源をすでに据え置いている、とみなしている。当然、そのようなことはないのだが、そうで「なければならない」のだ。それゆえ、アメリカの大使は厚かましくも我々に五千人を要求しているのである。ジョン・フィリップスの声明は、イタリアに軍事的指揮権の約束によって和らげられているが、我々が重要でないことを強調している。

リビアはすぐに手に入る1300億ドルの戦利品であり、仮にリビアの国が勢力ゾーン別に分割された同盟国となり、カダフィ大佐の時代のように輸出するようになれば、その額は3~4倍になるだろう。これらの推定数は、石油製造と、中央銀行やリビア開発基金の準備金を合計したものである。このリビア開発基金は、Zintanで拘留されているカダフィ大佐の息子、サイフ・イスラームが長年勉強したロンドンにあり、彼は昔は、中東とロンドンのシティに関心があるすべてのアラブ人と同じく、バッキンガム宮殿のよき招待客であった。イギリス人には、リビアの東部地方キレナイカのBP社やシェル社以外にも(この地方には、フランスやアメリカ、ドイツ、中国の合弁企業がある)、守るべき石油通貨のドルの金融資産がある。

爆撃に反対したために2011年に追い出されたロシア人たちも、自分たちの取り分をほしがっている。彼らはアルシシ将軍指揮下のエジプトにフランスと共にあらゆる武器を売っているが、そのエジプトを通してである。アルシシ将軍は、1943年にイギリスのチャーチル首相に主張したファルク王の基準に従って、キレナイカ地方が歴史的にはエジプトの土地であると考えている。(当時、チャーチルは「そのようなことはない」とにべもない返答をした。)しかしすべて欲望ために、十分にある。これはリビア戦争の闇黒い魅惑である。

リビアの戦利品は、存在する唯一の計画において、地域のセキュリティーシステムとの組み合わせで市場に戻らなければならない。このシステムは、チュニジアとアルジェリアを無視し、フランスをフェザーン地域のサヘルの番人、イギリスをキレナイカ地方の番人とし、エジプトの野心に気を配りながら、イタリアをトリポリ地方の番人とする。アメリカには、戦略的指揮権が与えられる。

分割され、断片化され、「非国家統一」の似非政府としてまとめられたリビア人には、この計画は好まれないだろう。なぜなら彼らはカダフィ大佐と戦争し、外国人に「賭け金」を与えたり保護下に陥ることなく、彼らの間で「エネルギー利権のケーキ」の分配するために互いに戦ったからである。

リビアの争いと共に、アラブとイスラムの権力の陰謀がある。彼らは自分たちのお気に入りの派閥をサポートする「火をつける消防士たち」である。エジプトはリビアの将軍カーリファ・ハフタールを操作し、カタールはトリポリの過激派イスラム教徒を大量のドルで誘惑し、アラブ首長国連邦はトブルクに近づくため前国連仲裁人ベルナルディーノ・レオンを買収した。トルコに至っては、リビアの都市スルトで聖戦をするためシリアからリビア人ジハーディストらを送り返した。

イスラム帝国の戦いは、抗争の一面に過ぎない。否、ISISは石油のための戦争の火が燃え上がっているちょうどそのときに、介入してきたのである。しかし欧米の関心事は、共通の目標という仮面で覆い隠されているが、フランス大統領ニコラス・サルコジが電話一本することなくカダフィを攻撃した当初からそれぞれ異なるのである。今では、私たちはこれらの舞台裏のことを知っている。ヒラリー・クリントンに送られた2011年4月2日付のメールには、カダフィが14か国の元植民地で使われているCFAフランを他のアフリカ共通通貨に変換しようとしていることを、シドニー・ブルーメンタール補佐官が明かしている。目的は、フランス系アフリカをパリから独立させることだった。元植民地は、パリに準備金の65%の預けている。そして当然、トータル社のためにキレナイカ地方の石油もあった。このように、偽の友達=競合相手=ライバルの連れ合いによって、戦争は準備されるのである。ドージェ(元首)のヴェネツィア共和国がやっていたことと同じように。

f:id:eastwindow18:20160405172911p:plain

 先日、現在内政が混乱しているブラジルのキリスト者と「政治と信仰者の関係」について話をしていたのだが、このような記事にも表れているような偽善を考えると、結局、問題となっているのは民主主義や共産主義などの一国の政治形態ではないと信じる。欧米や先進国が誇る「民主主義」や「資本主義」の大儀のもとに、様々な搾取や暴虐、抗争が行われてきたし、現在も行われている。自分自身がそのシステムの「恩恵」にあずかっているから、偽善のベールで覆われているほうが都合がいいのだ。だからこそ、自分とは異なる社会制度に生きる人々を「悪魔」扱いするのだろう。しかし信仰者がそれに同調するのは、とても悲しいことではないだろうか。歴史上、「キリスト教国」が行ってきたことを考えれば、なおさらである。

ガラテヤ6:14-16

14 しかし、わたし自身には、わたしたちの主イエス・キリストの十字架以外に、誇とするものは、断じてあってはならない。この十字架につけられて、この世はわたしに対して死に、わたしもこの世に対して死んでしまったのである。

15 割礼のあるなしは問題ではなく、ただ、新しく造られることこそ、重要なのである。

16 この法則に従って進む人々の上に、平和とあわれみとがあるように。また、神のイスラエルの上にあるように。 

コロサイ3:1-4

1 このように、あなたがたはキリストと共によみがえらされたのだから、上にあるものを求めなさい。そこではキリストが神の右に座しておられるのである。

2 あなたがたは上にあるものを思うべきであって、地上のものに心を引かれてはならない。

3 あなたがたはすでに死んだものであって、あなたがたのいのちは、キリストと共に神のうちに隠されているのである。

4 わたしたちのいのちなるキリストが現れる時には、あなたがたも、キリストと共に栄光のうちに現れるであろう。 

 

参考になる記事:

リビア人民の勝利?リビア戦争の10大神話