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ベートーヴェンの交響曲第九『歓喜の歌』について


ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」第4楽章 - YouTube

 日本では年末にベートーヴェンの交響曲第九を演奏する慣習があるようだが、その成り立ち、さらにこの作曲家の経歴、そしてこの交響曲のメッセージそのものを調べてみると、とても興味深いことがたくさん浮かび上がってくる。

 ウィキペディアによるとこの交響曲の第4楽章の「歓喜」の主題は、欧州評議会において「欧州の歌」としてヨーロッパ全体を称える歌として採択されているほか、欧州連合においても連合における統一性を象徴するものとして採択されている。

 歓喜の歌 - Wikipediaで、詩を書いたシラーのフリーメイソンの理念とベートーヴェンの関係についても確認できる。

『歓喜に寄せて』

おお友よ、このような旋律ではない!
もっと心地よいものを歌おうではないか
もっと喜びに満ち溢れるものを
(ベートーヴェン作詞)

歓喜よ、神々の麗しき霊感よ
天上楽園の乙女よ
我々は火のように酔いしれて
崇高な汝(歓喜)の聖所に入る

汝が魔力は再び結び合わせる
(1803年改稿)
時流が強く切り離したものを
すべての人々は兄弟となる
(1785年初稿:
時流の刀が切り離したものを
物乞いらは君主らの兄弟となる)
汝の柔らかな翼が留まる所で

ひとりの友の友となるという
大きな成功を勝ち取った者
心優しき妻を得た者は
彼の歓声に声を合わせよ

そうだ、地上にただ一人だけでも
心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ
そしてそれがどうしてもできなかった者は
この輪から泣く泣く立ち去るがよい

すべての存在は
自然の乳房から歓喜を飲み
すべての善人もすべての悪人も
薔薇の路をたどる

自然は口づけと葡萄酒と 
死の試練を受けた友を与えてくれた
快楽は虫けらのような者にも与えられ
智天使ケルビムは神の前に立つ

神の壮麗な計画により
太陽が喜ばしく天空を駆け巡るように
兄弟よ、自らの道を進め
英雄のように喜ばしく勝利を目指せ

抱き合おう、諸人(もろびと)よ!
この口づけを全世界に!
兄弟よ、この星空の上に
愛する父がおられるのだ

ひざまずくか、諸人よ?
創造主を感じるか、世界よ
星空の上に神を求めよ
星の彼方に必ず神は住みたもう

 「神」「創造主」「智天使(?!)ケルビム」「兄弟」などの表現が使われているが、この詩が持つ霊性は、明らかにキリスト教の霊性とは異なる。そしてこの霊性は、音楽や文学のみならず、ヨーロッパの政治や経済を実際に動かしている現実の一面である。

 普段何気なく聴いているもの、観ているもの、参加していること、心が動かされていることなどの背景にあるものを改めて検証してみることは、年の締めの自省の時だけではなく、普段の習慣として必要不可欠ではないだろうか。

 

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