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夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

真のナジル人(2)苦難を通して実を結ぶヨセフ

創世記37:1-11

1 ヤコブは父の寄留の地、すなわちカナンの地に住んだ。

2 ヤコブの子孫は次のとおりである。ヨセフは十七歳の時、兄弟たちと共に羊の群れを飼っていた。彼はまだ子供で、父の妻たちビルハとジルパとの子らと共にいたが、ヨセフは彼らの悪いうわさを父に告げた。

3 ヨセフは年寄り子であったから、イスラエルは他のどの子よりも彼を愛して、彼のために長そでの着物をつくった。

4 兄弟たちは父がどの兄弟よりも彼を愛するのを見て、彼を憎み、穏やかに彼に語ることができなかった。

5 ある時、ヨセフは夢を見て、それを兄弟たちに話したので、彼らは、ますます彼を憎んだ。

6 ヨセフは彼らに言った、「どうぞわたしが見た夢を聞いてください。

7 わたしたちが畑の中で束を結わえていたとき、わたしの束が起きて立つと、あなたがたの束がまわりにきて、わたしの束を拝みました」。

8 すると兄弟たちは彼に向かって、「あなたはほんとうにわたしたちの王になるのか。あなたは実際わたしたちを治めるのか」と言って、彼の夢とその言葉のゆえにますます彼を憎んだ。

9 ヨセフはまた一つの夢を見て、それを兄弟たちに語って言った、「わたしはまた夢を見ました。日と月と十一の星とがわたしを拝みました」。

10 彼はこれを父と兄弟たちに語ったので、父は彼をとがめて言った、「あなたが見たその夢はどういうのか。ほんとうにわたしとあなたの母と、兄弟たちとが行って地に伏し、あなたを拝むのか」。

11 兄弟たちは彼をねたんだ。しかし父はこの言葉を心にとめた。 

 このエピソードを引用した説教などで、「ヨセフは自分の見た夢を兄弟や親に語るべきではなかった。経験不足で知恵がなく、傲慢になっていたので夢を語り、その軽率さの報いとして兄弟らの憎しみを買うことになった」という解釈を何度か聞いたことがある。しかし、私はヨセフが夢を語ったことは決して軽率な行為などではなく、この青年が神の計画によって選ばれ、他の兄弟らから聖別されていたことの「しるし」であったと考えている。ヨセフがみた夢は全てを知っておられる神から来たものであり、その計画は予めヨセフの兄弟らや親に告げられていなければならなかったのである。たといその啓示によってヨセフが兄弟らに激しく憎まれ、奴隷として売られることになったとしても、である。

 ヨセフの夢を聞いた父ヤコブがその時はヨセフを咎めたが、それでもその言葉を心に留めたように、キリストの真理を私達が語り、それに生きようとするとき、必ず一定の人々、しかも近しい人々から否定的な反応や反感、咎めなどを受けたりする場合が多い。それは非常に苦痛な経験でもあるが、それと同時にその人々の一部の心の奥底に、証しされたキリストの「真理の種」が撒かれるのである。そしてその「真理の種」は時が来れば芽をだし、そして神が喜ぶ実を結ぶのである。

 聖書に登場する「ナジル人」、例えばサムソンやサムエル、そして洗礼者ヨハネなどに共通する点は、母親が子供を産めない状況であったのに神の力で子を授けられた、という点である。それは生まれてくる子が「神によって神の計画にために聖別された存在である」ということを明確に証ししていたのである。

士師記13:1-5

1 イスラエルの人々がまた主の前に悪を行ったので、主は彼らを四十年の間ペリシテびとの手にわたされた。

2 ここにダンびとの氏族の者で、名をマノアというゾラの人があった。その妻はうまずめで、子を産んだことがなかった。

3 主の使がその女に現れて言った、「あなたはうまずめで、子を産んだことがありません。しかし、あなたは身ごもって男の子を産むでしょう。

4 それであなたは気をつけて、ぶどう酒または濃い酒を飲んではなりません。またすべて汚れたものを食べてはなりません。

5 あなたは身ごもって男の子を産むでしょう。その頭にかみそりをあててはなりません。その子は生れた時から神にささげられたナジルびとです。彼はペリシテびとの手からイスラエルを救い始めるでしょう」。

Ⅰサムエル1:1-11

1 エフライムの山地のラマタイム・ゾピムに、エルカナという名の人があった。エフライムびとで、エロハムの子であった。エロハムはエリウの子、エリウはトフの子、トフはツフの子である。

2 エルカナには、ふたりの妻があって、ひとりの名はハンナといい、ひとりの名はペニンナといった。ペニンナには子どもがあったが、ハンナには子どもがなかった。

3 この人は年ごとに、その町からシロに上っていって、万軍の主を拝し、主に犠牲をささげるのを常とした。シロには、エリのふたりの子、ホフニとピネハスとがいて、主に仕える祭司であった。

4 エルカナは、犠牲をささげる日、妻ペニンナとそのむすこ娘にはみな、その分け前を与えた。

5 エルカナはハンナを愛していたが、彼女には、ただ一つの分け前を与えるだけであった。主がその胎を閉ざされたからである。

6 また彼女を憎んでいる他の妻は、ひどく彼女を悩まして、主がその胎を閉ざされたことを恨ませようとした。

7 こうして年は暮れ、年は明けたが、ハンナが主の宮に上るごとに、ペニンナは彼女を悩ましたので、ハンナは泣いて食べることもしなかった。

8 夫エルカナは彼女に言った、「ハンナよ、なぜ泣くのか。なぜ食べないのか。どうして心に悲しむのか。わたしはあなたにとって十人の子どもよりもまさっているではないか」。

9 シロで彼らが飲み食いしたのち、ハンナは立ちあがった。その時、祭司エリは主の神殿の柱のかたわらの座にすわっていた。

10 ハンナは心に深く悲しみ、主に祈って、はげしく泣いた。

11 そして誓いを立てて言った、「万軍の主よ、まことに、はしための悩みをかえりみ、わたしを覚え、はしためを忘れずに、はしために男の子を賜わりますなら、わたしはその子を一生のあいだ主にささげ、かみそりをその頭にあてません」。

ルカ1:5-17

5 ユダヤの王ヘロデの世に、アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリサベツといった。

6 ふたりとも神のみまえに正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな落度なく行っていた。

7 ところが、エリサベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。

8 さてザカリヤは、その組が当番になり神のみまえに祭司の務をしていたとき、

9 祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所にはいって香をたくことになった。

10 香をたいている間、多くの民衆はみな外で祈っていた。

11 すると主の御使が現れて、香壇の右に立った。

12 ザカリヤはこれを見て、おじ惑い、恐怖の念に襲われた。

13 そこで御使が彼に言った、「恐れるな、ザカリヤよ、あなたの祈が聞きいれられたのだ。あなたの妻エリサベツは男の子を産むであろう。その子をヨハネと名づけなさい。

14 彼はあなたに喜びと楽しみとをもたらし、多くの人々もその誕生を喜ぶであろう。

15 彼は主のみまえに大いなる者となり、ぶどう酒や強い酒をいっさい飲まず、母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされており、

16 そして、イスラエルの多くの子らを、主なる彼らの神に立ち帰らせるであろう。

17 彼はエリヤの霊と力とをもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるであろう」。

 ヨセフに関しても、不妊であったラケルが神の恵みによって与えられた子であった。

創世記30:1-2;22-24

1 ラケルは自分がヤコブに子を産まないのを知った時、姉をねたんでヤコブに言った、「わたしに子どもをください。さもないと、わたしは死にます」。

2 ヤコブはラケルに向かい怒って言った、「あなたの胎に子どもをやどらせないのは神です。わたしが神に代ることができようか」。

22 次に神はラケルを心にとめられ、彼女の願いを聞き、その胎を開かれたので、

23 彼女は、みごもって男の子を産み、「神はわたしの恥をすすいでくださった」と言って、

24 名をヨセフと名づけ、「主がわたしに、なおひとりの子を加えられるように」と言った。 

 しかし「奇蹟的な受胎」よりもさらに「ヨセフが真のナジル人である」ことを示しているのが、ヨセフの苦難を通して実現されることが啓示されていた神の選びの計画である。

 ヨセフが髪を伸ばしていたとか、ブドウ酒を飲まなかったとは聖書は啓示されていない。それでもヨセフは確かに神によって選び出され、言い表し難い苦難を通って神の計画の成就のために聖別され用いられた、実り豊かな「ナジル人」であった。

 そのような意味でも、ヨセフは人類の救いのために自分の命を捧げた「ナザレ人のイエス」の予型であると言えよう。

創世記49:22-26

22 ヨセフは実を結ぶ若木、泉のほとりの実を結ぶ若木。その枝は、かきねを越えるであろう。

23 射る者は彼を激しく攻め、彼を射、彼をいたく悩ました。

24 しかし彼の弓はなお強く、彼の腕は素早い。これはヤコブの全能者の手により、イスラエルの岩なる牧者の名により、

25 あなたを助ける父の神により、また上なる天の祝福、下に横たわる淵の祝福、乳ぶさと胎の祝福をもって、あなたを恵まれる全能者による。

26 あなたの父の祝福は永遠の山の祝福にまさり、永久の丘の賜物にまさる。これらの祝福はヨセフのかしらに帰し、その兄弟たちの君たる者の頭の頂に帰する。

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