an east window

夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

ヤコブの妻レアの人生(2)結婚

創世記29:20-30

20 こうして、ヤコブは七年の間ラケルのために働いたが、彼女を愛したので、ただ数日のように思われた。 

21 ヤコブはラバンに言った、「期日が満ちたから、わたしの妻を与えて、妻の所にはいらせてください」。 

22 そこでラバンはその所の人々をみな集めて、ふるまいを設けた。 

23 夕暮となったとき、娘レアをヤコブのもとに連れてきたので、ヤコブは彼女の所にはいった。 

24 ラバンはまた自分のつかえめジルパを娘レアにつかえめとして与えた。 

25 朝になって、見ると、それはレアであったので、ヤコブはラバンに言った、「あなたはどうしてこんな事をわたしにされたのですか。わたしはラケルのために働いたのではありませんか。どうしてあなたはわたしを欺いたのですか」。 

26 ラバンは言った、「妹を姉より先にとつがせる事はわれわれの国ではしません。 

27 まずこの娘のために一週間を過ごしなさい。そうすればあの娘もあなたにあげよう。あなたは、そのため更に七年わたしに仕えなければならない」。 

28 ヤコブはそのとおりにして、その一週間が終ったので、ラバンは娘ラケルをも妻として彼に与えた。 

29 ラバンはまた自分のつかえめビルハを娘ラケルにつかえめとして与えた。 

30 ヤコブはまたラケルの所にはいった。彼はレアよりもラケルを愛して、更に七年ラバンに仕えた。 

  愛するラケルと結婚するために七年間ラバンに仕えるという約束をしたヤコブは、その愛の故に一途に働いた。この七年という決して短くはない期間中、当人のラケルだけでなく、父親ラバンも姉のレアもヤコブの誠実な愛を間近で見、感じていたはずである。しかしいざ結婚式を挙げ、初夜をすごず段階で、ラバンはレアをヤコブのもとに連れていった。おそらく花嫁のベールで顔が隠れていたために、暗い夜の光では花嫁が実はレアであることに気付かなかったのだろう。朝起きてみて驚いたヤコブは、ラバンの所に飛んでいって「あなたはどうしてこんな事をわたしにされたのですか。わたしはラケルのために働いたのではありませんか。どうしてあなたはわたしを欺いたのですか」と文句を言った。

 幾ら当時の慣習に従ったラバンの命令とはいえ、レアがどんな気持ちで自分ことをラケルであると思い込んでいるヤコブのところへ行ったのか。また朝の光で自分の顔を見、騙されたことを知ったヤコブの顔がみるみる驚きと怒りに変わっていくのを見て、どのような思いになっただろうか。またヤコブが自分のことを寝床に残し、一目散にラバンの所へ走っていくのを見て、どんなに屈辱的な気持ちになっただろうか。しかしレアがそのような結果になることを想像できなかったとは思えない。むしろ彼女はヤコブが自分のことに愛情を注ぐようになるだろうという、ひそかな期待を胸のうちに抱いていたのではないだろうか。この後に起こる「子作り戦争」にまつわるラケルとの確執を読むと、このような複雑な乙女心が浮かび上がってくる。しかし、その期待はすぐ失望と嫉妬に変わっていった。ヤコブはレアよりもラケルを愛したからである。

 

(3)へ続く