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an east window

夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

カゼルタ宮殿のパラティーナ礼拝堂の「傷跡」

シンボリズム 知恵 心の琴の音

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 南イタリアのナポリ市から約20kmのところにあるカゼルタ Casertaの宮殿に行ってきた。世界遺産として認定され、様々な映画のロケにも使われている18世紀の宮殿の壮大さとその内部の装飾の壮麗さは実に驚異的だが、私の関心を奪ったのはパラティーナ礼拝堂の内部の破損した柱であった。自分でもかなりひねくれているとは思うが、美しい調和の階段や様々な装飾よりも、今にもバキッと折れそうなコリント式の柱が気になってしまったのである。

 説明を聞くと、第二次大戦中、アメリカ軍の空爆を受け、その後修復工事が施工されたものの、オリジナルの大理石がもう掘り尽されて手に入らないことから、復元されることなく現在に至っているらしい。ちなみに、礼拝堂の中にあったオルガンも完全に破壊され、再現されなかったようである。

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 セメントか樹脂のようなもので粗雑に塗り固められず、完璧に修復されていたら、おそらく爆撃にあった歴史など、わずかな言葉によってしか伝えられなかったかもしれない。見学者にも実感は湧かなかっただろうし、ただ「美しいものを観た」という感想だけしか残らなかったかもしれない。

 しかし修復する石が手に入らなかったゆえ、その「傷跡」は残り、過去の惨事を静かに物語っているのである。オリジナルの状態の栄華を復元するというのも、修復の一つの在り方なのかもしれないが、個人的にはこのように過去の人間の失敗や愚行の「傷跡」を残す在り方も、十分に意味があるのではないかと思う。

 興味深いシンボリズムである。