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an east window

夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

「忘れられた女」ケトラ(5)そして再び

いにしへからの教訓 聖書による検証

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 次にアブラハムのそばめケトラの子孫であるミデアンびとが聖書に登場するのは、イスラエルの民が主なる神の力によってエジプトの奴隷生活から解放され、四十年という歳月の間、荒野を彷徨った果てにやっとヨルダン川東岸にたどり着いたときであった。

民数記22:1-8

1 さて、イスラエルの人々はまた道を進んで、エリコに近いヨルダンのかなたのモアブの平野に宿営した。

2 チッポルの子バラクはイスラエルがアモリびとにしたすべての事を見たので、

3 モアブは大いにイスラエルの民を恐れた。その数が多かったためである。モアブはイスラエルの人々をひじょうに恐れたので、

4 ミデアンの長老たちに言った、「この群衆は牛が野の草をなめつくすように、われわれの周囲の物をみな、なめつくそうとしている」。チッポルの子バラクはこの時モアブの王であった。

5 彼はアンモンびとの国のユフラテ川のほとりにあるペトルに使者をつかわし、ベオルの子バラムを招こうとして言わせた、「エジプトから出てきた民があり、地のおもてをおおってわたしの前にいます。

6 どうぞ今きてわたしのためにこの民をのろってください。彼らはわたしよりも強いのです。そうしてくだされば、われわれは彼らを撃って、この国から追い払うことができるかもしれません。あなたが祝福する者は祝福され、あなたがのろう者はのろわれることをわたしは知っています」。

7 モアブの長老たちとミデアンの長老たちは占いの礼物を手にして出発し、バラムのもとへ行って、バラクの言葉を告げた。

8 バラムは彼らに言った、「今夜ここに泊まりなさい。主がわたしに告げられるとおりに、あなたがたに返答しましょう」。それでモアブのつかさたちはバラムのもとにとどまった。

 モアブ部族の王、チッポルの子バラクは、イスラエルの群衆が非常に数多いのを見て、恐れおののき、ミデアンびとの長老たちに助けを求めた。モアブびとは、アブラハムの甥であったロトが自分の娘との近親相姦によって生まれてきた子の子孫であった。

創世記19:36-38

36 こうしてロトのふたりの娘たちは父によってはらんだ。 

37 姉娘は子を産み、その名をモアブと名づけた。これは今のモアブびとの先祖である。

38 妹もまた子を産んで、その名をベニアンミと名づけた。これは今のアンモンびとの先祖である。 

 神はモアブびととアンモンびとの土地を通るとき、「彼らを敵視してはならない。争い戦ってはならない」と命じていた。

申命記2:8-9

8 こうしてわれわれは、エサウの子孫でセイルに住んでいる兄弟を離れ、アラバの道を避け、エラテとエジオン・ゲベルを離れて進んだ。われわれは転じて、モアブの荒野の方に向かって進んだ。

9 その時、主はわたしに言われた、『モアブを敵視してはならない。またそれと争い戦ってはならない。彼らの地は、領地としてあなたに与えない。ロトの子孫にアルを与えて、領地とさせたからである。 

申命記2:18-19

18 『おまえは、きょう、モアブの領地アルを通ろうとしている。

19 アンモンの子孫に近づく時、おまえは彼らを敵視してはならない。また争ってはならない。わたしはアンモンの子孫の地を領地として、おまえに与えない。それをロトの子孫に領地として与えたからである

 しかし、イスラエルの民がモアブびとの領地を平和に通過しようとしたのに対して、モアブの王は偽預言者バラムを金で雇い、イスラエルの民を呪わせようとした。その邪悪な対応のために、神は律法の中で、モアブびととアンモンびとがご自身の民に加わることを厳しく禁じた。

申命記23:3-6

3 アンモンびととモアブびとは主の会衆に加わってはならない。彼らの子孫は十代までも、いつまでも主の会衆に加わってはならない。

4 これはあなたがたがエジプトから出てきた時に、彼らがパンと水を携えてあなたがたを道に迎えず、アラム・ナハライムのペトルからベオルの子バラムを雇って、あなたをのろわせようとしたからである。

5 しかし、あなたの神、主はバラムの言うことを聞こうともせず、あなたの神、主はあなたのために、そののろいを変えて、祝福とされた。あなたの神、主があなたを愛されたからである。

6 あなたは一生いつまでも彼らのために平安をも、幸福をも求めてはならない。

 しかし、ミデアンびとの長老たちは、なぜここでモアブ王に加担したのだろうか。なぜわざわざ呪いの言葉の報酬をもって、はるばるユウフラテ川までバラムを訪ねていったのだろうか。ミデアンびとはアブラハムの子孫ではなかったのだろうか。ミデアンの祭司エテロは、主なる神を畏れ、その知恵に頼ることを教えていなかっただろうか。イスラエルの民は、この時、ミデアンの土地を通過することを要求しただろうか。ミデアンのパンと水を貪ろうとしただろうか。なぜ自分の兄弟を呪うことに加担しなければならなかったのだろうか。

 主なる神は偽預言者バラムがご自身の民を呪うことを許されなかった。そしてその呪いを祝福へと変えた。しかしイスラエルの民がシッテムに留まっていたとき、偽預言者バラムは、ミデアンびとの女性を利用して神の民を誘惑し、民を内側から攻撃した。

民数記25:1-18

1 イスラエルはシッテムにとどまっていたが、民はモアブの娘たちと、みだらな事をし始めた。

2 その娘たちが神々に犠牲をささげる時に民を招くと、民は一緒にそれを食べ、娘たちの神々を拝んだ。

3 イスラエルはこうしてペオルのバアルにつきしたがったので、主はイスラエルにむかって怒りを発せられた。

4 そして主はモーセに言われた、「民の首領をことごとく捕え、日のあるうちにその人々を主の前で処刑しなさい。そうすれば主の怒りはイスラエルを離れるであろう」。

5 モーセはイスラエルのさばきびとたちにむかって言った、「あなたがたはおのおの、配下の者どもでペオルのバアルにつきしたがったものを殺しなさい」。

6 モーセとイスラエルの人々の全会衆とが会見の幕屋の入口で泣いていた時、彼らの目の前で、ひとりのイスラエルびとが、その兄弟たちの中に、ひとりのミデアンの女を連れてきた。

7 祭司アロンの子なるエレアザルの子ピネハスはこれを見て、会衆のうちから立ち上がり、やりを手に執り、

8 そのイスラエルの人の後を追って、奥の間に入り、そのイスラエルの人を突き、またその女の腹を突き通して、ふたりを殺した。こうして疫病がイスラエルの人々に及ぶのがやんだ。

9 しかし、その疫病で死んだ者は二万四千人であった。

10 主はモーセに言われた、

11 「祭司アロンの子なるエレアザルの子ピネハスは自分のことのように、わたしの憤激をイスラエルの人々のうちに表わし、わたしの怒りをそのうちから取り去ったので、わたしは憤激して、イスラエルの人々を滅ぼすことをしなかった。

12 このゆえにあなたは言いなさい、『わたしは平和の契約を彼に授ける。

13 これは彼とその後の子孫に永遠の祭司職の契約となるであろう。彼はその神のために熱心であって、イスラエルの人々のために罪のあがないをしたからである』と」。

14 ミデアンの女と共に殺されたイスラエルの人の名はジムリといい、サルの子で、シメオンびとのうちの一族のつかさであった。

15 またその殺されたミデアンの女の名はコズビといい、ツルの娘であった。ツルはミデアンの民の一族のかしらであった。

16 主はまたモーセに言われた、

17 「ミデアンびとを打ち悩ましなさい。

18 彼らはたくらみをもって、あなたがたを悩まし、ペオルの事と、彼らの姉妹、ミデアンのつかさの娘コズビ、すなわちペオルの事により、疫病の起った日に殺された女の事とによって、あなたがたを惑わしたからである」。 

 その後、主なる神はこのペオルの事件のことで、ミデアンびとに対する報復を命じた(民数記31章)。ミデアンの民のうちでその報復から免れたのは、「まだ男と寝ず、男を知らない娘」三万二千人だけだったという、本当に厳しい処罰であった。

 勿論、このエピソードは律法の下にあった契約によるもので、主イエス・キリストの恵みの契約においては、このような報復は命じられていない。

 しかし、何ということだろう。もしケトラの子孫のミデアンびとの長老たちが、モアブの王の謀略に加担していなかったら、それを断固として拒否していたら、このような悲劇は起こらなかっただろう。ミデアンの祭司エテロの娘で、モーセの妻であったチッポラは、この事件の時まだ生きていたのだろうか。自分の同族の長老たちが選んだ滅びの道の結果を、どんな思いで受け止めなければならなかったろうか。

 皮肉なことに、アブラハムのそばめケトラの子孫の血は、一度は神の祝福の契約の子らから引き離されたものの、この悲劇的な事件を通し、三万二千人の乙女たちによって、再び契約の子孫と一つになり、共通の父アブラハムが信仰によって歩んでいた約束の地に、共に入っていくことになったのである。

 これは神のかたちに造られた人間が、罪を犯したゆえに神の栄光を失ったが、御子イエス・キリストの尊き命の代価によって、神の民、そして御子のからだであり、花嫁である教会を構成するものとして加えられたことの予型とは言えないだろうか。