an east window

夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

ヘブロンに関する考察(3)レビびとの町、逃れの町

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(赤い星印は、「逃れの町」を示す。ヨルダン川東部に三か所、西部にも同じく三か所定められていた。)

民数記35:6;10-15;25-34

6 あなたがたがレビびとに与える町々は六つで、のがれの町とし、人を殺した者がのがれる所としなければならない。なおこのほかに四十二の町を与えなければならない。

10 「イスラエルの人々に言いなさい。あなたがたがヨルダンを渡ってカナンの地にはいるときは、

11 あなたがたのために町を選んで、のがれの町とし、あやまって人を殺した者を、そこにのがれさせなければならない。

12 これはあなたがたが復讐する者を避けてのがれる町であって、人を殺した者が会衆の前に立って、さばきを受けないうちに、殺されることのないためである。

13 あなたがたが与える町々のうち、六つをのがれの町としなければならない。

14 すなわちヨルダンのかなたで三つの町を与え、カナンの地で三つの町を与えて、のがれの町としなければならない。

15 これらの六つの町は、イスラエルの人々と、他国の人および寄留者のために、のがれの場所としなければならない。すべてあやまって人を殺した者が、そこにのがれるためである。

25 すなわち会衆はその人を殺した者を血の復讐をする者の手から救い出して、逃げて行ったのがれの町に返さなければならない。その者は聖なる油を注がれた大祭司の死ぬまで、そこにいなければならない。

26 しかし、もし人を殺した者が、その逃げて行ったのがれの町の境を出た場合、

27 血の復讐をする者は、のがれの町の境の外で、これに出会い、血の復讐をする者が、その人を殺した者を殺しても、彼には血を流した罪はない。

28 彼は大祭司の死ぬまで、そののがれの町におるべきものだからである。大祭司の死んだ後は、人を殺した者は自分の所有の地にかえることができる。

29 これらのことはすべてあなたがたの住む所で、代々あなたがたのためのおきての定めとしなければならない。

30 人を殺した者、すなわち故殺人はすべて証人の証言にしたがって殺されなければならない。しかし、だれもただひとりの証言によって殺されることはない。

31 あなたがたは死に当る罪を犯した故殺人の命のあがないしろを取ってはならない。彼は必ず殺されなければならない。

32 また、のがれの町にのがれた者のために、あがないしろを取って大祭司の死ぬ前に彼を自分の地に帰り住まわせてはならない。

33 あなたがたはそのおる所の地を汚してはならない。流血は地を汚すからである。地の上に流された血は、それを流した者の血によらなければあがなうことができない。

34 あなたがたは、その住む所の地、すなわちわたしのおる地を汚してはならない。主なるわたしがイスラエルの人々のうちに住んでいるからである」。

申命記19:1-13

1 あなたの神、主が国々の民を滅ぼしつくして、あなたの神、主がその地を賜わり、あなたがそれを獲て、その町々と、その家々に住むようになる時は、

2 あなたの神、主が与えて獲させられる地のうちに、三つの町をあなたのために指定しなければならない。

3 そしてそこに行く道を備え、またあなたの神、主があなたに継がせられる地の領域を三区に分け、すべて人を殺した者をそこにのがれさせなければならない。

4 人を殺した者がそこにのがれて、命を全うすべき場合は次のとおりである。すなわち以前から憎むこともないのに、知らないでその隣人を殺した場合、

5 たとえば人が木を切ろうとして、隣人と一緒に林に入り、手におのを取って、木を切り倒そうと撃ちおろすとき、その頭が柄から抜け、隣人にあたって、死なせたような場合がそれである。そういう人はこれらの町の一つにのがれて、命を全うすることができる。

6 そうしなければ、復讐する者が怒って、その殺した者を追いかけ、道が長いために、ついに追いついて殺すであろう。しかし、その人は以前から彼を憎んでいた者でないから、殺される理由はない。

7 それでわたしはあなたに命じて『三つの町をあなたのために指定しなければならない』と言ったのである。

8 あなたの神、主が先祖たちに誓われたように、あなたの領域を広め、先祖たちに与えると言われた地を、ことごとく賜わる時、――

9 わたしが、きょう、命じるこのすべての戒めを守って、それをおこない、あなたの神、主を愛して、常にその道に歩む時――あなたはこれら三つの町のほかに、また三つの町をあなたのために増し加えなければならない。

10 これはあなたの神、主が与えて嗣業とされる地のうちで、罪のない者の血が流されないようにするためである。そうしなければ、その血を流したとがは、あなたに帰するであろう。

11 しかし、もし人が隣人を憎んでそれをつけねらい、立ちかかってその人を撃ち殺し、そしてこれらの町の一つにのがれるならば、

12 その町の長老たちは人をつかわして彼をそこから引いてこさせ、復讐する者にわたして殺させなければならない。

13 彼をあわれんではならない。罪のない者の血を流したとがを、イスラエルから除かなければならない。そうすればあなたにさいわいがあるであろう。 

 イスラエルの民がまだ約束の地に入る前、ヨルダン川の東側にいるとき、主なる神はモーセを通して、今から入っていく約束の地全域において、他の部族とは違って土地を嗣業に持つことが許されなかったレビ族の人々に四十八の町を決めるように命令し、そのうち六つの町を「逃れの町」として定めるように命じた。

 この「逃れの町」は、ある人が誤って他人を殺してしまった場合や正当防衛によって危害を加えてしまった場合に、その加害者が被害者の親族などから直接的・個人的復讐を受けることがないように、避難することができるためであった。興味深い点は、その「逃れの町」までの道は、整えられていなければいけなかったことや、イスラエルの土地のどの地点からも到達できるような位置でなけれがいけなかったことである。また領土が拡大することを想定して、最初の三つの町のほかに、もう三つの町を加えることを命じていることからも理解できるように、領土全域の定住することになる民に均等な条件を提供しようとするものであった。そしてこの律法は、イスラエルの民のうちに寄留していた異邦人(ユダヤ人以外の人々)にも適用されるものであった。

 その逃れの町に避難した加害者は、大祭司が生きている間その町に留まることによって復讐を受ける危険から守られていた。しかしもしその町の境界線から一歩でも出た場合は、命の責任は加害者のものであった。

 またもし人が故意に隣人を殺した場合には、たとえ逃れの町に避難したとしても、調べられ、裁きを受けなけばならなかった。

 主なる神はカナンの土地に民を導きいれる前には、これらの六つの町の名を指定していないところを見ると、それは民自身の選択や土地の分割や地形など、様々な条件をもとに実際に土地に入ってから決められたのだろう。

 そしてカナンの土地を入り、戦争によってそれらの土地を勝ち取ったヨシュアは、六つの逃れの町を定め、その一つにヘブロンを選んだ。

ヨシュア20:1-9

1 そこで主はヨシュアに言われた、

2 「イスラエルの人々に言いなさい、『先にわたしがモーセによって言っておいた、のがれの町を選び定め、

3 あやまって、知らずに人を殺した者を、そこへのがれさせなさい。これはあなたがたが、あだを討つ者をさけて、のがれる場所となるでしょう。

4 その人は、これらの町の一つにのがれて行って、町の門の入口に立ち、その町の長老たちに、そのわけを述べなければならない。そうすれば、彼らはその人を町に受け入れて、場所を与え、共に住ませるであろう。

5 たとい、あだを討つ者が追ってきても、人を殺したその者を、その手に渡してはならない。彼はあやまって隣人を殺したのであって、もとからそれを憎んでいたのではないからである。

6 その人は、会衆の前に立って、さばきを受けるまで、あるいはその時の大祭司が死ぬまで、その町に住まなければならない。そして後、彼は自分の町、自分の家に帰って行って、逃げ出してきたその町に住むことができる』」。

7 そこで、ナフタリの山地にあるガリラヤのケデシ、エフライムの山地にあるシケム、およびユダの山地にあるキリアテ・アルバすなわちヘブロンを、これがために選び分かち

8 またヨルダンの向こう側、エリコの東の方では、ルベンの部族のうちから、高原の荒野にあるベゼル、ガドの部族のうちから、ギレアデのラモテ、マナセの部族のうちから、バシャンのゴランを選び定めた。

9 これらは、イスラエルのすべての人々、およびそのうちに寄留する他国人のために設けられた町々であって、すべて、あやまって人を殺した者を、そこにのがれさせ、会衆の前に立たないうちに、あだを討つ者の手にかかって死ぬことのないようにするためである。

  こうして見ると、キリアテ・アルバと呼ばれていたヘブロンは、イスラエルの土地において非常に重要な要素をいくつも持っていたことがわかる。

  1. アブラハムやイサク、ヤコブが信仰者として神と共に歩んだ土地であった。
  2. ヘブロンのマクペラの洞穴には、アブラハム、イサク、ヤコブ、そして彼らの妻たちが葬られていた。
  3. アブラハムらが生活していたときは、ヘテびとが同じ土地に共住していたが、イスラエルの民が約束の地に入った時には、王がいて、カレブの説明によれば「町は大きく堅固」であった。おそらくキリアテ・アルバ(「アルバの町」という意味)が建立者であり、アナクの父であったアルバによって城壁が造られ堅固化されたのが、エジプトのツォアン建立の七年前だったのだろう。
  4. モーセが送り出した十二人の偵察が任務を終えて帰ってきたとき、ヨシュアとカレブ以外の十人は、原住民のアナクの子孫を恐れて約束の土地に入ることを拒否したが、カレブはその四十五年後、それらの背の高い人々と戦い、ヘブロンを獲得した。つまりヘブロンはある意味、「不信仰による敗北」と「信仰による勝利」の象徴でもあった。
  5. ヘブロンは主なる神の礼拝に携わるレビびとの町であった。
  6. ヘブロンはイスラエルの領地に六か所設定された「逃れの町」のひとつであった。

  しかしイスラエルの歴史のおいて、ヘブロンの特徴や歴史的重要性を示すこのリストは、まだまだ続くのである。

 

(4)に続く