an east window

夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

「人の子の死」と「イスカリオテのユダの死」(3)邪悪な値踏み

マタイ26:1-16

1 イエスはこれらの言葉をすべて語り終えてから、弟子たちに言われた。

2 「あなたがたが知っているとおり、ふつかの後には過越の祭になるが、人の子は十字架につけられるために引き渡される」。

3 そのとき、祭司長たちや民の長老たちが、カヤパという大祭司の中庭に集まり、

4 策略をもってイエスを捕えて殺そうと相談した。

5 しかし彼らは言った、「祭の間はいけない。民衆の中に騒ぎが起るかも知れない」。

6 さて、イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家におられたとき、

7 ひとりの女が、高価な香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、イエスに近寄り、食事の席についておられたイエスの頭に香油を注ぎかけた。 

8 すると、弟子たちはこれを見て憤って言った、「なんのためにこんなむだ使をするのか。

9 それを高く売って、貧しい人たちに施すことができたのに」。

10 イエスはそれを聞いて彼らに言われた、「なぜ、女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。

11 貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつも一緒にいるわけではない。

12 この女がわたしのからだにこの香油を注いだのは、わたしの葬りの用意をするためである。

13 よく聞きなさい。全世界のどこででも、この福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」。

14 時に、十二弟子のひとりイスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところに行って 

15 言った、「彼をあなたがたに引き渡せば、いくらくださいますか」。すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。

16 その時から、ユダはイエスを引きわたそうと、機会をねらっていた。 

 過越の祭りの6日前から、イエス・キリストと弟子たちはエルサレムから15スタディオン(約2700M)離れたところにあるベタニヤの村へ行き(ヨハネ12:1)、祭りの2日前にイエスは「人の子は十字架につけられるために引き渡される」と言って、ご自分の死を弟子たちにあらかじめ伝えた。

 そしてらい病人シモンの家にいたとき、マルタの妹マリヤは高価で純粋なナルドの香油をイエスの頭に注ぎ、また足にも塗って、自分の髪の毛でそれをふいた。(ヨハネ12:3 マタイが香油を頭に注いだことを強調したのは、イエスがイスラエルの王であり、真の預言者、天の大祭司であることを暗示しているからである。ヨハネにおいて「イエスの足にぬり、自分の髪の毛でそれをふいた」とあるのは、弟子たちが互いにへりくだり仕え合う僕の態度を失っていたのとは対照的に、マリヤがイエスを「自分の主人」として仕えていたことを示している。ヨハネ13章において、イエス自ら弟子たちの足を洗うことによって、主なる神に仕えるとはどういう意味かを弟子たちに教えた。)

 そのマリヤの行為に対して、弟子たちは憤り、「なんのためにこんなむだ使をするのか。それを高く売って、貧しい人たちに施すことができたのに」と非難した。ヨハネの福音書によると、その弟子たちの中で、特にイスカリオテのユダは先頭に立って批判していた。

ヨハネ12:4-6

4 弟子のひとりで、イエスを裏切ろうとしていたイスカリオテのユダが言った、

5 「なぜこの香油を三百デナリに売って、貧しい人たちに、施さなかったのか」。 

6 彼がこう言ったのは、貧しい人たちに対する思いやりがあったからではなく、自分が盗人であり、財布を預かっていて、その中身をごまかしていたからであった。 

 ユダは、 実践どころか良心さえ伴わない「それを高く売って、貧しい人たちに施すことができたのに」という偽善の言葉で、自分の心の中に潜んでいる貪欲を覆い隠し、神の言葉の光によって照らされることから逃げ隠れた。

 そして「史上最も高価な死」のための葬りの用意として、最高級の香油をイエスに注いだことを、「無駄使い」と「値踏み」し、非難した。

 さらに、罪びと(もちろん、ユダも含まれていた!)の救いのために、尊い命をすべて捧げたようとしていた御子自身を「値踏み」し、銀貨三十枚という、奴隷のひとりの値段に等しい「価格」を付けた。

 このような最も崇高なことに対して「邪悪な値踏み」をしたので、ユダ自身「裏切り者」として「永遠の値踏み」がなされてしまった。

 マリヤの行為に「全世界のどこででも、この福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」という「永遠の価値」が与えられ、御子の命は信じるものの魂の救いの「永遠の代価」となったこととは対照的である。

マルコ14:45

人の子がきたのも、仕えられるためではなく、仕えるためであり、また多くの人のあがないとして、自分の命を与えるためである。

Ⅰペテロ1:18-19

18 あなたがたのよく知っているとおり、あなたがたが先祖伝来の空疎な生活からあがない出されたのは、銀や金のような朽ちる物によったのではなく、

19 きずも、しみもない小羊のようなキリストの尊い血によったのである。 

 

(4)に続く