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夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

生けるキリストを求めて(22)アブラハムの目の前に立つ二人の王

創世記14:17-24

17 アブラムがケダラオメルとその連合の王たちを撃ち破って帰った時、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷に出て彼を迎えた。

18 その時、サレムの王メルキゼデクはパンとぶどう酒とを持ってきた。彼はいと高き神の祭司である。

19 彼はアブラムを祝福して言った、「願わくは天地の主なるいと高き神が、アブラムを祝福されるように。

20 願わくはあなたの敵をあなたの手に渡されたいと高き神があがめられるように」。アブラムは彼にすべての物の十分の一を贈った。

21 時にソドムの王はアブラムに言った、「わたしには人をください。財産はあなたが取りなさい」。

22 アブラムはソドムの王に言った、「天地の主なるいと高き神、主に手をあげて、わたしは誓います。

23 わたしは糸一本でも、くつひも一本でも、あなたのものは何にも受けません。アブラムを富ませたのはわたしだと、あなたが言わないように。

24 ただし若者たちがすでに食べた物は別です。そしてわたしと共に行った人々アネルとエシコルとマムレとにはその分を取らせなさい」。 

 メソポタミア地方から死海近辺の諸国を攻めこんで来ていたケダラオメルとその連合の王たちは、ソドムの王ベラとゴモラの王ビルシャを破り、そして彼らの財宝と食糧をことごとく奪い、さらにアブラム(アブラハム)の甥ロトとその財産さえも奪っていった。

 身内の者が捕虜になったのを聞いたアブラムは、三百十八人の訓練したしもべを引き連れて連合軍を追い、それを撃ち破り、すべての財産を取り返し、また身内の者ロトとその財産および女たちと民とを取り返した。 

 その勝利からの帰路、シャべの谷(「王の谷」)においてアブラハムは、ソドムの王ベラが迎え出てくるのを見た。その時、何処からともなくもう一人の王がアブラハムを迎え出てきた。

その時、サレムの王メルキゼデクはパンとぶどう酒とを持ってきた。彼はいと高き神の祭司である。

  サレム(やがて「エルサレム」と呼ばれるようになる町。「平和」「救い」という意味。)の王、メルキセデク (「正義の王」という意味)。新約聖書においても引用されているエピソードである。

へブル7:1-3

1 このメルキゼデクはサレムの王であり、いと高き神の祭司であったが、王たちを撃破して帰るアブラハムを迎えて祝福し、

2 それに対して、アブラハムは彼にすべての物の十分の一を分け与えたのである。その名の意味は、第一に義の王、次にまたサレムの王、すなわち平和の王である。

3 彼には父がなく、母がなく、系図がなく、生涯の初めもなく、生命の終りもなく、神の子のようであって、いつまでも祭司なのである。

 この時、アブラハムの目の前には、二人の王が立っていた。主なる神に対して罪を犯す邪悪なソドムの町の王ベラと、「平和と義の王」「いと高き神の祭司」メルキセデクであった。そしてメルキセデク王がアブラハムをパンとブドウ酒で迎え、アブラハムと神を祝福したのとは対照的に、ソドムの王ベラは開口一番、「わたしには人をください。財産はあなたが取りなさい」とアブラハムに要求した。

 それぞれの王に対するアブラハムの反応も、見事に対照的である。メルキセデクに対して、「願わくはあなたの敵をあなたの手に渡されたいと高き神があがめられるように」という祝福を証しするかの様に、アブラハムは戦利品の十分の一をメルキセデクに贈った。対照的に、「財産はあなたが取りなさい」といったソドムの王ベラには、こう言った。

創世記14:22,22

22 アブラムはソドムの王に言った、「天地の主なるいと高き神、主に手をあげて、わたしは誓います。

23 わたしは糸一本でも、くつひも一本でも、あなたのものは何にも受けません。アブラムを富ませたのはわたしだと、あなたが言わないように。 

 このように、勝利の誉を自分自身に帰することを拒否したアブラハムは、自分の富が被造物であるソドムの王の恩恵によるものだと言われることも拒否したのである。全ての栄光と感謝を受けるにふさわしい方は、天地の主なるいと高き神だけであることを信じていたからである。

 アブラハムを迎え出た二人の王メルキセデクとゾラは、「王の王、主の主」であるイエス・キリストと、「この世の君」なるサタンの予型である。そしてアブラハムと同様、私達一人ひとりに対しても、選択が与えられている。パンとブドウ酒に顕されているように、御自身の命を捧げてくださった大祭司イエス・キリストによる執り成しを信じ、罪の赦しと救いという祝福を受け、主なる神に全ての栄光を帰すことを選ぶか。それとも、地上の富や成功と引き換えに、「わたしには人をください」という要求に応じて、最も大切な魂を明け渡し、サタンの野望に従うか。

マタイ4:8-10

8 次に悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せて

9 言った、「もしあなたが、ひれ伏してわたしを拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう」。

10 するとイエスは彼に言われた、「サタンよ、退け。『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。 

 アブラハムがメルキセデク王の祝福を選択したのは、ごく当然のように思えるかもしれない。しかし、人間の心はそれほど単純ではないことは、アブラハムの甥ロトがとった選択が証明している。新約聖書はロトを「義人」と呼んでいる。しかしそのロトは、奴隷としてメソポタミアの国に連れて行かれる非常に危険な経験から救われたにもかかわらず、ソドムの王の配下にまた戻り、邪悪な人々が住む町の中に家を購入し、そこで生活することを選んだのだから。

 主よ、私たちに正しい選択ができるよう、あなたの知恵と力を与えてください。

 

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