生けるキリストを求めて(15)死を見るために地に移されたキリスト
創世記5:21-24
21 エノクは六十五歳になって、メトセラを生んだ。
22 エノクはメトセラを生んだ後、三百年、神とともに歩み、男子と女子を生んだ。
23 エノクの年は合わせて三百六十五歳であった。
24 エノクは神とともに歩み、神が彼を取られたので、いなくなった。
へブル11:5,6
5 信仰によって、エノクは死を見ないように天に移された。神がお移しになったので、彼は見えなくなった。彼が移される前に、神に喜ばれた者と、あかしされていたからである。
6 信仰がなくては、神に喜ばれることはできない。なぜなら、神に来る者は、神のいますことと、ご自身を求める者に報いて下さることとを、必ず信じるはずだからである。
このエノクは預言者エリヤと共に、肉体的死を通らないで神の御前に引き上げられた人物として聖書の啓示されている人物である。神が地上を裁くために大洪水をおこす前に引き上げられたことから、終わりの時に地上が裁かれる前に携挙される「キリストの教会」を予型している、という解釈などもある。
しかし今回は御子キリストとの関係で考察してみたい。エノクは「神とともに」歩み、地上の生において「神に喜ばれた者と、あかしされていた」。その信仰によって、神はエノクが「死を見ないように」天に移された、とある。しかし、エノクの信仰の歩み、そしてエノクが死を見なかったことは、肉体の死の中に閉じ込められていた地上の誰をも救うことができなかった。
対照的に御子イエス・キリストは、インマヌエル(「神はわれらとともに」という意味)と呼ばれ 、神の子にして父なる神と絶えず共に歩いていた。そのような御子を父なる神自身が「神に喜ばれた者」として証しをしていた。
マタイ17:5
彼がまだ話し終えないうちに、たちまち、輝く雲が彼らをおおい、そして雲の中から声がした、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である。これに聞け」。
御子イエス自身もそれを証ししていた。
ヨハネ16:32
見よ、あなたがたは散らされて、それぞれ自分の家に帰り、わたしをひとりだけ残す時が来るであろう。いや、すでにきている。しかし、わたしはひとりでいるのではない。父がわたしと一緒におられるのである。
また周囲の人々もそれを証ししていた。
ヨハネ3:1,2
1 パリサイ人のひとりで、その名をニコデモというユダヤ人の指導者があった。
2 この人が夜イエスのもとにきて言った、「先生、わたしたちはあなたが神からこられた教師であることを知っています。神がご一緒でないなら、あなたがなさっておられるようなしるしは、だれにもできはしません」。
イエス・キリストは父なる神と共に地上を歩まれ、神に喜ばれた者として証しされていたにもかかわらず、「死を見ないように」天に移されず、かえって「死を味わうために」十字架の死を通られた。それは彼自身のためではなく、死の鎖に繋がれ、天の門を閉ざされてしまっていた人類に救いを与えるためであった。
へブル2:9,10,14,15
9 ただ、「しばらくの間、御使たちよりも低い者とされた」イエスが、死の苦しみのゆえに、栄光とほまれとを冠として与えられたのを見る。それは、彼が神の恵みによって、すべての人のために死を味わわれるためであった。
10 なぜなら、万物の帰すべきかた、万物を造られたかたが、多くの子らを栄光に導くのに、彼らの救の君を、苦難をとおして全うされたのは、彼にふさわしいことであったからである。
14 このように、子たちは血と肉とに共にあずかっているので、イエスもまた同様に、それらをそなえておられる。それは、死の力を持つ者、すなわち悪魔を、ご自分の死によって滅ぼし、
15 死の恐怖のために一生涯、奴隷となっていた者たちを、解き放つためである。
エノクやエリヤ、そして罪びとである私達が信仰によって救いに与ることができるのは、ひとえに父なる神に愛されていた御子イエスが、「死を見るために」天の栄光から地上に移され、そこで「神と共に」十字架の死まで歩まれたからである。
ピリピ2:5-11
5 キリスト・イエスにあっていだいているのと同じ思いを、あなたがたの間でも互に生かしなさい。
6 キリストは、神のかたちであられたが、神と等しくあることを固守すべき事とは思わず、
7 かえって、おのれをむなしうして僕のかたちをとり、人間の姿になられた。その有様は人と異ならず、
8 おのれを低くして、死に至るまで、しかも十字架の死に至るまで従順であられた。
9 それゆえに、神は彼を高く引き上げ、すべての名にまさる名を彼に賜わった。
10 それは、イエスの御名によって、天上のもの、地上のもの、地下のものなど、あらゆるものがひざをかがめ、
11 また、あらゆる舌が、「イエス・キリストは主である」と告白して、栄光を父なる神に帰するためである。