マタイ24:15-21
15 預言者ダニエルによって言われた荒らす憎むべき者が、聖なる場所に立つのを見たならば(読者よ、悟れ)、
16 そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。
17 屋上にいる者は、家からものを取り出そうとして下におりるな。
18 畑にいる者は、上着を取りにあとへもどるな。
19 その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。
20 あなたがたの逃げるのが、冬または安息日にならないように祈れ。
21 その時には、世の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような大きな患難が起るからである。
マルコ13:14-19
14 荒らす憎むべきものが、立ってはならぬ所に立つのを見たならば(読者よ、悟れ)、そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。
15 屋上にいる者は、下におりるな。また家から物を取り出そうとして内にはいるな。
16 畑にいる者は、上着を取りにあとへもどるな。
17 その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。
18 この事が冬おこらぬように祈れ。
19 その日には、神が万物を造られた創造の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような患難が起るからである。
ルカ21:20-24
20 エルサレムが軍隊に包囲されるのを見たならば、そのときは、その滅亡が近づいたとさとりなさい。
21 そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。市中にいる者は、そこから出て行くがよい。また、いなかにいる者は市内にはいってはいけない。
22 それは、聖書にしるされたすべての事が実現する刑罰の日であるからだ。
23 その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。地上には大きな苦難があり、この民にはみ怒りが臨み、
24 彼らはつるぎの刃に倒れ、また捕えられて諸国へ引きゆかれるであろう。そしてエルサレムは、異邦人の時期が満ちるまで、彼らに踏みにじられているであろう。
マタイ、マルコ、ルカの名で呼ばれている三つの福音書は、共観福音書と呼ばれているが、よく読み比べると、同じエピソードを異なる観点から見、異なる表現で表しているだけでなく、似たような表現を使って異なることを啓示している場合があることに気付く。
例えば冒頭で引用した聖句では、マタイとマルコは反キリストがエルサレムに建てられる第三神殿の至聖所に立つ時、つまり七年続く大患難期のちょうど中頃の時の事を啓示しているが、ルカは反キリストには触れず、「エルサレムは、異邦人の時期が満ちるまで、彼らに踏みにじられているであろう」とあるように、西暦七十年に起きたローマ軍によるエルサレムの破壊とユダヤ人の離散を預言していたもので、異邦人の完成の時(ローマ11:25)、つまりユダヤ人以外の諸民族がすべて救いの福音を聞き、信じた人々全員が救われる時までの二千年近い時期を包括的に啓示しているのである。
そしてマタイとマルコにおいて使われている「その日には、神が万物を造られた創造の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような患難が起るからである」という表現がルカにおいては使われていないので、「聖書にしるされたすべての事が実現する刑罰の日である」というルカの啓示は、イエス・キリストが十字架にかけられる前に預言していた「神の訪れの時を知らなった罪に対する刑罰」が「この民」つまりユダヤ民族とエルサレムの都に下ることを第一義的に示しているのだろう。
ルカ19:41-44
41 いよいよ都の近くにきて、それが見えたとき、そのために泣いて言われた、
42 「もしおまえも、この日に、平和をもたらす道を知ってさえいたら……しかし、それは今おまえの目に隠されている。
43 いつかは、敵が周囲に塁を築き、おまえを取りかこんで、四方から押し迫り、
44 おまえとその内にいる子らとを地に打ち倒し、城内の一つの石も他の石の上に残して置かない日が来るであろう。それは、おまえが神のおとずれの時を知らないでいたからである」。
またマルコでは使われていない「聖なる場所」「安息日」という表現がマタイにおいては言及されているのは、マタイによる福音書が当初、ユダヤ人のために書かれた福音書だということを示している。
さらに、「冬」「安息日」という時期に関する言及や、「ユダヤにいる人々は山へ逃げよ」という空間に関する勧告は、「荒らす憎むべき者が、聖なる場所に立つ」というおぞましい出来事が、目に見えない霊的な出来事ではなく、エルサレムの神殿において、ある特定の日に、目に見えるかたちで具体的に起きる事象であることを啓示している。
このように共観福音書をそのまま読み比べるだけでも、色々なことが示されるので、是非他の箇所についても試していただきたい。ヘブライ的解釈やらギリシャ語によるウンチクも悪くはないが、福音書記者に霊感を与えた神の霊自身が、シンプルに真理を求めているあなたの心をキリストの光で照らしてくださるであろう。
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