an east window

夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

より優れた契約の啓示

 イエス・キリストの救いの恵みの福音は、地球上のあらゆる人間に対して備えられたもので、新約聖書はその前提を基に、世界中のあらゆる言語圏の人々が自分の言語で聖書を読めるように翻訳されている。しかしその新約聖書を構成している二十七巻の福音書や手紙など中には、読者の対象を第一義的に限定して書かれたものがある。特に『へブル人への手紙』と『ヤコブの手紙』は、イエス・キリストを信じて救われたユダヤ人信者に対して書かれた手紙である。『へブル人への手紙』の中に旧約聖書からの引用が多いのは、メッセージの対象が旧約聖書を読み親しんでいたヘブライ人だったからである。『ヤコブの手紙』は、その冒頭で明確に手紙の対象を記述している。

ヤコブ1:1

神と主イエス・キリストとの僕ヤコブから、離散している十二部族の人々へ、あいさつをおくる。 

 現代的な表現を使うならば、イエスをメシヤであると信じた「メシアニック・ジュ―」が、他の「メシアニック・ジュ―」の信仰を正し励ますために書かれた手紙である。『ヤコブの手紙』は、「国外の散っている十二部族」の信仰者たちに、真の信仰の質の実践的な面に関して、歯に衣着せぬダイレクトな表現で言及している。

 特に『へブル人への手紙』は、「旧約聖書の啓示にキリストを見出す」という意味で、旧約の解釈の模範である。特に「神の安息日」の意味(4章)、「律法によって定められていたレビ族の祭司職とは全く異なる、大祭司としてのイエス・キリスト」(7章)、「いけにえの違いに啓示されている、古い契約と新しい契約の決定的な違い」(8~10章)など、「むかしは、預言者たちにより、いろいろな時に、いろいろな方法で、先祖たちに語られたが、この終りの時には、御子によって、わたしたちに語られた」(へブル1:1,2)その神の啓示が、如何に卓越したものか、シンプルな通読でも十分理解できるものである。

へブル8:6(岩波翻訳委員会訳1995)

だが、今や、〔私たちの大祭司は〕さらに卓越した務めをかちえている、より優れた約束に基づいて定められている、より優れた契約の仲介者であるだけに。