an east window

夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

聖書に書き込まれた名

 近所にあるアンティーク雑貨を扱う小さな店(元々肉屋だったおじさんが、趣味が高じて始めた店)で、戦前のイタリア語聖書を見つけた。表紙が黒く、天地と小口が赤い、一目で昔の宗教本だとわかる外観で、すぐに手に取って開いてみた。黄ばんだ頁に沢山の書き込みある。あまり美しいとは言えない筆記体だが、心に残った聖句だったのだろう、いくつも書き出してある。中には何か所も下線が引いてあった。一気に一文に線を引いた個所もあれば、一句一句を確かめるように短い下線が引かれている聖句もある。小口に小さく霞んだ字で女性の名前が書いてある。その名から判断すると、イタリア南部出身だったのではないかと思う。

 家事の合間に台所でこの聖書を読んでいたのだろうか。ベッドの横で子供に読み聞かせていたかもしれない。涙で頁を濡らす時もあっただろう。

 この読み込まれてボロボロの聖書に書かれた一人の女性の名を見て、預言者イザヤの口を通して語った主の言葉を思い出した。

 イザヤ43:1、2

1 ヤコブよ、あなたを創造された主はこう言われる。イスラエルよ、あなたを造られた主はいまこう言われる、「恐れるな、わたしはあなたをあがなった。わたしはあなたの名を呼んだ、あなたはわたしのものだ。わたしはあなたの名を呼んだ、あなたはわたしのものだ。

2 あなたが水の中を過ぎるとき、わたしはあなたと共におる。川の中を過ぎるとき、水はあなたの上にあふれることがない。あなたが火の中を行くとき、焼かれることもなく、炎もあなたに燃えつくことがない 

  いつまでも存続するものは、信仰と希望と愛と、この三つである。このうちで最も大いなるものは、愛である。