an east window

夜明けとなって、明けの明星が心の中に上るまで

森の奥の花

ルカ12:27,28

27 野の花のことを考えて見るがよい。紡ぎもせず、織りもしない。しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。 

28 きょうは野にあって、あすは炉に投げ入れられる草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。  

 数年前、昼間でも薄暗いような森の奥で、ひっそりと咲いていた一輪の山百合の気高い美しさに、 しばらく呆然と立ちつくした経験がある。その美しさは、写真にとるのが野暮ったい行為に思えるほどだった。今でも鮮明にその情景を思い浮かべることができる。あの花はおそらく、私以外の誰にも見られることも知られることもなく、これまたひっそりと枯れていったであろう。否、人間が見る見ないに関係なく、あの花はあの美しさをもって孤高に咲き、散って行ったのだ。

 しかしそれと同時に、人間にだけ、あの一見「無意味な」美しさの中に、神のメッセージを受け取る霊が与えられている。誰にも知ることができない「心の森」の奥で、美しいものを美しいと感じる以上のメッセージを汲み取る霊を。

 これもまた奇蹟である。